世界そば紀行 (2011年)
◆ 国内の食べ歩き
国内のそば店の食べ歩きを800軒程した時、日本にはなんと色々と個性豊かな蕎麦店が有り、しかもすべてのお店がより「美味しいそば」を求め日夜努力されていることを目の当たりに感じました。
店をオープンする前に長男正寿、妻恵子と試食の旅をしました。北は北海道の釧路の“かきそば"を日本で最初に考案されたお蕎麦屋さん、ご主人も女将さんも親切で色々と教えて頂いた。
知人に連れて行ってもらった埼玉のお店は息子さんが修行中でご主人の指導を受けていた。食事後にお話しを聞く機会があり、「店のオープンに向け、勉強しています」と家内が告げますと、「体に気を付け頑張って下さい。」と目頭を熟くして言われた女将さんの姿が印象的でした。
大阪と奈良のそば店に家内と行きましたが、信州の玄蕎麦を自家製粉していて、今までに食べた事のない美味しさに出会いました。
この後、千葉のお蕎麦屋さんに行きましたが、ご主人のそばに対する情熱は人並みでなく、自家製粉という蕎麦の歴史を塗り替える中心にいる方でした。
後ほど縁が有り長男は短期ですがお世話になりました。店長(息子)は丹波篠山市と東京亀有にあるお店でも勉強させていただきました。
「水萌えそば」の商品化はこの“世界のソバ料理食べ歩き”がきっかけ
2011年3月に中国雲南省にソバの勉強に出かけました。
外国に興味を持ち始めたのは佐久市で蕎麦店を営業して10年を迎えようとした時に、これからはグローバル化の時代で、外国語のメニューも必要だとのアドヴァイスが有り、外国語の勉強を始めたのがきっかけでした。
(当時は地元の企業も外国との取引が盛んで、中国始め、韓国、インド、アメリカ、ロシア、イギリス、ドイツ等各国からお客さんがみえました。特に中国、韓国のお客さんは頻繁に来庵)。
海外に目を向けた時、様々なソバ料理が有る事に驚きます。日本のそば「文化」を紹介すると同時に「海外のそば文化」を勉強する為にも外国語の習得に熱が入りました。英語、中国語、韓国語、ロシア語、フランス語など夢中でレッスンしました。
世界ではソバの生産量が一番多いのはロシアで、ロシアは自国だけでは足りず中国などから輸入しています。二番目は中国です、しかし中国は都市化の影響かソバを作る農家が減り生産量は減っています。日本は世界でも5、6番目位の生産量です。しかし「そばきり」の消費量は多く、輸入に頼っているのが現状です。
ソバは昔米作の出来ない所とか、米の不作の時に代替え食糧として推奨されていました。
「第13回国際ソバシンポジュウム」が1013年スロベニアで開催されました。世界の研究者はソバに真摯に向かい合いソバの発展に尽力されている姿に感動しました。特に国際ソバ学会のイワン.クレフト会長はソバ料理の開発研究もされています。他の研究者の方も同様です。
特筆する事はこのシンポジュウムの席で井上直人教授(信州大学農学部)から先生の考案された「どうづきそば」をやらないかと言うお誘いを頂いた事です。(磊庵ではこの「どうづきそば」をソバの水萌える瞬間を捉え「水萌えそば」と称する)。
1-中国雲南省の旅
さて、最初の訪問国になぜ中国を選んだかというと、中国雲南省は“ソバの原産地”だからです。大西近江教授(京都大学)が最古のソバの種を発見しました。(後でお聞きしたのですが発見された地域は私が行きました大山砲より南方の方だそうです)。
2011年3月6日~18日、
12日と13日に雲南省大山砲で農家の人に会い、現況を聞いたり、空港の敷地内に有るソバ工場で製粉、加工の様子を見学しました(工場の責任者は若い女性の方でした)。
そこで試飲した「ソバ茶」の美味しさに驚きました。香りも良く、甘味もあり、色は黄色が鮮やか、ダッタンソバだから、苦味が最初にくると思いきや期待は見事に裏切られました。そして地元の人が食べるソバ料理を試食しました。
ソバの大判焼き、ソバの実を茹でたもの、ソバの揚げ物(ソバをこね、のしたそばを四角に小さく切り、外で乾燥させ保存したものを油で揚げる)、あとソバ酒も出ました。アルコール度数が高く驚きました。標高が高いのでお酒の度数が高くとも平気だとの事、何か分かったような分からないような説明。
2-韓国の旅
9月8日~13日。
韓国の訪問は冬季オリンピックの開催されるピョンチャンです。
ピョンチャンには「そばの花の咲く頃」の著者短編小説家李蘇石の生家があり、資料館もあります。李蘇石にちなみ毎年そば祭りが盛大に開かれています。
今回の訪問は家内と一緒で富山県南砺市の人達に同行しました。利賀村の中谷さんをリーダーに20数名でした。(中谷さんは現在全国麺協会長)。利賀村はピョンチャンと10数年交流をされている。
祭り会場は広大で、イベントも沢山、“ソバ(冷麺)の実演、そばのちぢみ、そばマッコリ、そば豆腐、そば菓子“と色とりどり。出店の多さにも圧倒される、期間中来場者数十万人。観光バスも数台、駐車場は満車。
こんなに大掛かりな「そば祭り」は日本でもあまり見ない。
ともかく「そば冷麺」はさっぱりして美味しい、「そばマッコリ」もなかなかのもの。
3-スロベニア(欧州)の旅
8月21日~27日。
「第13回国際ソバシンポジュウム」がスロベニアにて開催(三年に一度の開催)。
世界のソバ研究者、関係者の集い。開催地は各国持の持ち回り(ユニークなのは参加者の投票で決めるシステム、私にも投票権があり驚いた。参加者は皆同じ権利を持つという事の様)。
スロベニアでは、ソバパスタ、ソバクッキー、ソバパン、ソバアイス、ソバ菓子等の試食会が会議の合間に行われた。会議は各国のソバ現況やら研究成果の報告が有りました。
井上教授の研究生二人が「どうづきそば」の研究発表をされました。
郊外イベントでは日本から上野やぶそば店のご主人を中心とした日本そばの会の皆さんのそば打ちの実演も有り盛況でした。海外で鵜飼さん(上野やぶそば店)とお話し出来たのは愉快な出来事でした。世界ソバ食べ歩きは「そば文化」の学習だけでなくたくさんの人と出会うチャンスでもあります。まさに世界に友人が出来ます。これからもチャンスがあれば渡航したいと思います。
以上です。
アルバム
世界のソバの呼び名
- 韓国語は「メミル」粘りのないコムギの意。
- 英語は「バック.ウィ‐ト」バックはブナであり「ブナ.コムギ」の意
- ドイツ語は「ブーフ.バイツェン」
- ポルトガル語は「ファゴ.ピロ」
- デンマーク語は「ボク.ベード」でいずれも「ブナ.コムギ」の意
- フランス語は「サラセン」で“サラセン人”の意
- イタリア語は「グラノ.サラセーノ」は“サラセン人の穀物の意。
- ロシア語は「グレチーハ」で“ギリシア人の穀物の意。
- この様に世界中でソバが生産され食されている事が分る。
(参考文献―氏原暉男著「ソバを知り、ソバを生かす」より)